lunatrium/fabula cella
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【2009/01/08 03:08】
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ある朝三時
流動的なニュースは僕を疲れさせる。コンポから耳に入る音楽の歌詞を考察してみる。そこで歌われている、「一昨年のニュース」なんてもう覚えていない。
一昨年、誰が殺された?
ニュース、という情報から一足飛びに思考がその言葉を導いた。無差別に、怨恨を以て誰かが殺される。僕は殺人の報道を見る度、よくも人間は亡びないものだと思う。
止まらないニュースとヴォーカルのがなり声が僕の部屋を支配する。ミュートにしていたテレビの音量を上げた。それに負けないようにコンポの音量も上げる。音で部屋が飽和した。
人が死ぬニュースが多すぎる。そう嘆きながらも僕はその事態に馴れていく。その方が楽だ。
僕たちが築いたものというのは、やはりどこかで間違ってしまったのではないか。少しずつ過ちを集めて、人が不意に死ぬシステムを作り上げてしまったのではないだろうか。そうでなければ、過去のニュースを振り返るたび、死者の名前に出会うことはない。いつまた飛行機が、列車が、子供が、異常者が、権力者が、僕が人を殺すか分からない。
僕はコンポもテレビも消すと、部屋から廊下に出た。
鏡の前を歩いて過ぎると、殺人者が僕の目端を横切る。
【2005/12/28 22:15】
短編モノ
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noir
暗闇に恐怖していたのは、小学校に上がる前までだった。何が俺の感覚を変えたのか分からない。しかしいつの頃からか、暗闇に安堵するようになった。
夜に庭に出るのが好きだった。光がない世界は冷たい。その冷たさに目をつぶると、肌の奥から心臓の音が聞こえてくる気がした。季節ごとの温度が、常に俺を包んでいた。
一度、ただの一度だけ庭から出たことがある。小学二年の梅雨のことだった。久しぶりに見た月が鋭い尖りを見せていて、門を開けていた。俺は月が浮かぶ方向に走っていた。サンダルのゴム底がぱたぱた鳴った。今思うと、無邪気な音だ。見慣れた近所の道を月を追って走り、行き止まりにぶつかる度、回り道を見つけた。走るのに疲れて道端に座り込むと、自分がどこにいるのかわからないことに気付いた。周囲とは未知だった。見知らぬものの中、月を眺めた。それはまるで、この異国にただひとつ持ち込むことが出来た故郷の記憶のようで俺を捉えた。
座り込んだ俺の背には林があった。母方の実家のそばにあるものに似ていた。俺は木々が磨き上げた美しい深い闇に魅入られた。俺の目には、土の上の葉は緑色に見えない。全てが黒く塗り固められている中で俺は、本当に強い眠気に襲われた。夜中に走り続けたせいもあったろうが、全くの黒に近い闇は俺に安楽をもたらす。林に足を踏み入れた。一歩ずつ進むにつれ、俺は月を忘れていった。月は光を注ぐだけのデバイスであり、光とは闇を奪う賊でしかなかった。
いつ眠ったのだか分からない。どうやって家に戻ったのかも覚えていない。気付けば俺は大人になっていて、暗闇よりも薄明かりの中で隣に恋人の体温を据え置くことを望むようになった。それを成長と呼ぶのかもしれない。恋人との夜、窓の外に闇を見る度、俺はその回想と一緒に喉を渇かせる。
【2005/12/21 23:52】
短編モノ
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